【 MARBLE    お食事中の方は気をつけて 】























テニス部のマネージャーになって最初の仕事がコレかよ。

は部室にあるいくつもの扉の一つの扉を開けてジャージの腕をまくる。
彼女の目の前には。
何と形容すればいいのかわからないほど様々なものが積み重なり、
これまた何と形容すればいいのかわからない異臭を放つ部屋。

イッツアゴミワールドである。ネーミングセンスが悪いのはご愛嬌。
おそらくきちんと換気をしていれば楽であろうに、それをしていなかった為、
その異臭がこもってしまっていたのだろう。

他の部屋はわりかし綺麗なのに何でここだけこんなに汚いんだ。

は一番近くにある、きっと以前はタオルだったのであろう布切れ
手袋をはめた手で持ち上げる。なんともいえない異臭がマスクをつけている鼻にきた。

・・・・・・・くさい。

それが正直な感想だったが、思っていても仕方が無い。
下手をしたら命に関わるかもしれない。大袈裟じゃないくらい。
はとりあえず半透明のゴミ袋を広げてタオルをそれに突っ込む。

本屋のおっちゃんに薦められて読んだ少女漫画みたいな仕事は無いのでしょうか。

は現れたハーフパンツをこの仕事を言いつけた跡部にみたて、
叩きつけるようにゴミ袋に突っ込んだ。















埃が立ってむせた。































「・・・・・で。終わったのか?」

「まだですね。」

「それで何でテメェはここで呑気に紅茶飲んでんだ。アーン?」


跡部が部室に来てみるとそこにはイッツアゴミワールドで掃除をしている筈のが紅茶を飲んでいた。
その隣には色々なものが詰め込まれているゴミ袋が5袋転がっている。


「飽きたのん。」

「ふざけんな。」


・・・・・・・・・・・。


「まあまあちょっと休憩だよ。跡部も休憩?だったら紅茶飲む?いいの見つけたの。」

「お前が今飲んでいるそのダージリンは俺の用意したものだ。」

「およ。そうなの?じゃあ丁度いいじゃん。入れようか?」

「・・・・・・・・・入れろ。」


どうやら跡部は文句を言う気が失せたらしい。
先ほどの言葉も嫌味で言ったつもりだったのだがさらりと流された。
というよりも本人は嫌味だと気が付いていないようだ。

こいつバカだ。そんなのは今更だ。

彼女は鼻歌を歌いながら湯を注いでいる。


コトン


「どうぞ。」

「・・・・・・・お前、紅茶入れ慣れてねぇな。」

「え。まあ、そんなに飲まないし。」

「香りが落ちてる。」

「あ、じゃあもっといい香りするんだ。」

「・・・・・・ったく。」


跡部は不満そうにしながらも紅茶に口をつける。


「で。どこまで進んだ?」

「何の話?」

「決まってんだろ、掃除だ。」

「ああ、イッツアゴミワールドの事ね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だそれは。」

「え?イッツアゴミワールド?」

「・・・・・・・・・それはあの部屋の事か?」

「うん!」


何故そんな自信満々に言うんだこいつ。


「・・・・・・・もういい。」

「もう掃除しなくていいのっ!?」

「そっちじゃねぇ!!」


何自分の都合のいい方に話進めようとしている。


「えっと。進度ですね進度。」

「・・・・ああ。」

「んと、とりあえず臭いのきついものはあの袋の中に封印したよ。」


は転がる5個のゴミ袋を指さす。
きっとここであれをあけると惨事になるのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・考えただけで恐ろしい。


「で?」

「ああ、うん。それでさ今あの部屋入らない方がいいと思うの。」

「入らない方がいいのは元々だろ。」


まあそうなんだけど。


「あそこね、いるのよ。

「何が。」

「玉葱のにおいが大好きなヤツよ。」

「玉葱?」

「冷蔵庫の下とかにいるヤツよ。」

「・・・・・?」

「黒くてカサカサカサって走るヤツ。」

「はっきり言え。」

「・・・・・・・・・・・もしかして、知らない?」


これだけ言えばわかると思うんだけど。

しかしの考えに反し、跡部は黙ったまま彼女を見る。
は少し悩んだが、言え、といわんばかりの跡部の顔に仕方なく口を開く。


「・・・・・・・・・・・ゴキちゃんだよ。」

「ゴキ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・ブリちゃんでもいいけど。」

「・・・・・ああ。ゴキブリかよ。」

「あ。知ってんだ。」


ゴキちゃんもしくはブリちゃんだよ。
フルネームでなんて呼べないでしょーが。


「で。まだそのゴキブリは始末してねぇんだろ?」

「うん。」

「さっさと始末しろよ。」

「数が多すぎるの。」


ものをどけると蠢く音が聞こえるんだよ?

・・・・・・・げぇ。


「尚更じゃねぇかよ・・・・・。」

「手伝ってよ。」

「嫌だ。」

「テニス部部室のピンチなんだよ!?」

「・・・・・・・・・・・・。」


無視られた。


「・・・・・跡部家でゴキちゃん出たときどうしてんの?」

「知るか。掃除は怠っていない。」

「跡部が?」

「メイドが。」


・・・・・・・・・。


「うぉぉぉっ!」


メイドなんて単語が出るなんて東京凄い!!



メイド?

冥土の土産っ!!!



フォー!!!!



「・・・・・・・そのキモいポーズやめろ。」



セイセイセイ!!

























殴られた。



















お母さん、新事実です。
























跡部様は実はハードゲイ知ってるみたいです。









とまあそんな衝撃な事実を知ったのですが。
跡部がメニューに戻った後。
これ以上遊んでると大変な事になりそうな気がしたので仕方なく手袋をはめなおす。



さて。






いざ行かん、イッツアゴミワールドへ・・・・・っ!!














が。
























「うっぎゃーーーーッッ!!!!!」










バタンッ!!!!!!




コツンッ






はもの凄い悲鳴を上げ、そして扉をもの凄い勢いで閉めた。
扉の向こうで何かがぶつかったような音が聞こえたが、何だったのだろうか。




ガチャッ


ちゃんっ!!」


芥川が先ほどの声に何事かと走ってきた。
そして目の前の光景に目を見開く。

マスクをして、手袋をはめて、だばだばと泣き顔、のの姿。












「・・・・・えっと・・・変質者ごっこ?」






そんな遊びがあってたまるか。




「・・・・・・・・・。」


思いっきりジト目で見ると、芥川はごめんごめんと謝り近づく。


「どうしたの?すっごい悲鳴だったよ?」


どうやらあの悲鳴は外にも丸聞こえだったらしい。
凄い悲鳴、だったのに駆けつけてきたのは芥川だけだというのも少し悲しい。


「そ、そんなに凄い声だった・・・?」

「うん。向日なんてびっくりしてジャンプの着地出来なくて地面とコンニチハしてたよ?」


じ・・・地面とコンニチハ・・・・・・・・・・・ゴメン岳人。


「鳳はびっくりして手元狂って、宍戸の頬すれすれのサーブ打っちゃってた。」


・・・・・・・・・・・ゴメン鳳君・・・ってかむしろゴメン宍戸。


「でさ。ちゃん何があったの?」

「あー、否大丈夫大丈夫。問題無いよノープロブレム。」

「さっきの叫び声でノープロブレムって言ったらプロブレムにはどうなるの?」


ジロー君。遠まわしに言えと言ってますね。
・・・・・・・・・ちょっと怖い。


「えっと、プロブレムの時は地割れがちゃん俺怒るよ?」


ひいっ。

やっぱり怖かった。


「ごめんなさい。言うから怒らないで。」

「うん。」


芥川はにぱっと効果音が付きそうないつもの笑顔に戻る。
その表情の変わり様が無茶苦茶怖い。


「実は、ね。」

「うん。」

「実は・・・・・扉を開けたらゴキちゃんが3匹飛んできたから驚いて思いっきり叫んだだけなの。」


一瞬の事だったのでが3匹確認できただけで、
もしかしたらもっと飛んできていたのかもしれない。
あの、コツン、という音はゴキブリが扉に衝突した音だったというわけだ。


「・・・・うげぇっ。」

「でしょ。」


芥川はその場を想像したのだろう、顔を顰めた。


「でも、よかった。ちゃん怪我でもしたのかと思った。」


芥川はにこっと笑っての頭を撫でる。
何故撫でられているのだろうか、それはよくわからない。


「本当お騒がせしてすんません。」

「俺は別に目が覚めただけだしー。多分跡部には何か言われると思うけど。
 跡部、かっこつけたポーズ決めたときにあの叫び声だったからさー。こけてた。


うわっ!見てぇ!!

跡部がこける姿、それはかなり貴重かもしれない。
は中々想像出来ないその状況を思い浮かべようと格闘してみた。
結局それは無理でやはりナマで見たかったと思っていた。


「それで、そんな跡部を見た忍足が爆笑して、跡部に足蹴にされてた。





だからちゃんも覚悟しといた方がいいかもしれない。
















さらりと芥川が言ったその言葉には冷や汗をたらりとたらすのだった。

























Buck


































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まあ跡部がいる部活だったら掃除くらいさせちゃいそうな気がするのですが。
そんな事言ったら話が進まないので、つっこまないでいてやってください。