【 MARBLE    だって女の子だもんっ 】
























お母さん。男子テニス部のマネージャーになる事になったよ。







そう夕飯を食べてる時に言ってみた。







そしたら。




















お母さんは味噌汁を噴出しかけ口元にネギをくっつけたまま言った。




























「え!?あの美形揃いのテニス部っ!!??」

















ちょっと待て。






何で美形揃いだと知っているのですか。





















「やーっ!本当、氷帝に入学させてよかったわ!!」


そう言って母親はぐっとガッツポーズをした。


「氷帝ってセキュリティがいいだけじゃなくて、生徒のレベルも高いのよね!
 あわよくばそんな男の子とが仲良くなっちゃったりしちゃったり!
 とか期待してたんだけどまさかテニス部とはねぇ。、でかしたわっ!!!」



親指を立ててにっこりと笑う母親。
は、生徒のレベル、と言うのが決して中学生としての学力だけではないんだろうなと悟った。
思い出してみれば母親はかなり真剣に氷帝のパンフレットやらなにやらを見ていたような気がする。
親として子どもの為に真剣に調べていたのだ、とはその時思ったのだが。
実際は己の為だったのだという事なのだろうか。


「・・・・・・・・・・・・・・お父さん。」

「・・・・・・・何だ、我が娘よ。」

「何でお母さんと結婚したの?」

「それは聞かない約束だっただろ?」


そうだった。ごめん。

とその父親は箸を持ちながら茫然と母親を妻を見ていた。










私はあんな風にはなりたくないなぁ。





心配するなもう遅い。










が呟いた言葉に、父親はふっと遠くを見て言った。

































・・・・・・・さてと。



昨日は母親に散々褒められて過ごして、その翌日。

授業も終わって、放課後。
校庭では既にサッカー部らしき人がボールを蹴ったりしている。
はそんな様子を見ながらテニスコートのフェンスの扉を開ける。


「あ。はっけーんっ!」

「向日君っ!!」


が振り向くと向日が鞄を肩にかけて駆け寄ってくる。





ウサギが・・っ!


可愛いウサギが駆け寄ってくる・・・・・っっ!!










「お姉さんの胸に飛び込んでおいで・・・っ!!」


はがばっと両腕を広げる。
その時の彼女の目は漫画のようなあの曲線を描いていた。
にんまりと笑いすぎておそらく前は見えていない。










ぼすっ













ん・・・・?

何故だろう何だか少し受け止めた衝撃が大きかった気がする。

























「んー・・・柔らかいなぁ・・・・・。」











ちょっと待て
















私は向日君を待っていたのよ。






あの可愛らしいおかっぱをがしがしと撫でようと思ってたのよ。













それなのに何故。

















「ん?どないしたん?。」











忍足が居るんだよ。


















「・・・・・・・忍足。」

「んー?」

「私から今すぐ離れやがれ。」

「嫌って言ったら?」

「めいいっぱい力の限り蹴り上げる。

「何を・・・・・・って否わかった離れる。


忍足は冷や汗を流しながら慌てて離れる。
どうやらが何を蹴り上げるつもりだったのかを理解したらしい。


「こんな所で痴漢撃退のノウハウが役に立つとは思わなかった。」


男性の痴漢は急所を蹴り上げれば立っていられなくなるんだってさ。
都会は危ないからって引っ越す時にクラスメートが教えてくれた。


「・・・・・痴漢て・・・酷いでー。」

「いきなり抱きついてきたらそりゃ痴漢と変わらないでしょ。」

「せやかて、が両手広げて待っててくれたから俺は・・・・・」

「私は向日君を待ってたんだ阿呆」

「俺?」


ひょこっと向日が顔を出す。
それを見つけてはやっと来た待ってましたと言わんばかりに両手を広げる。


「向日君、カモーン!

「否。無理。」


拒否られた。


「俺はOKやで?」

「忍足には聞いてない。」

「・・・・・そこまではっきり言わんでも。」


だって本当の事だもの。


は項垂れる忍足を無視して、部室に入る。
そして一番奥の小さな部屋、レギュラーたちのロッカーのある部屋の隣の部屋に入る。
その部屋は昨日跡部が夜中に用意した部屋らしい。
一体どんな工事をすればこんな早く部屋が一つ出来るのだろうか。

東京って凄いな・・・・・・。

決して東京だから凄いわけではない。

はてきぱきと運動着に着替える。
部屋にさっき来た時に通った扉以外にもう一つ付いている扉。
そこからは直接外に出られるようになっている。
扉を開けて外に出ると、丁度鳳が部室から出てきたところだった。
もう既にジャージを着ているという事は、が来る前からもう来ていたのだろう。
彼女の視線に気が付いた鳳はぺこりと頭を下げた。


先輩、こんにちは。」

「鳳君、こんにちは!」


がちゃりと扉が開いて、向日と忍足、そして宍戸が出てくる。


「やっほー、宍戸。」

「おお。」


片手を軽く上げては宍戸に言う。
宍戸は言葉だけではあるがきちんとそれに答える。


さん、こんにちは。」

「あ。滝君こんにちはー。」


滝とその後に日吉が歩いていた。
日吉は軽く頭を下げてそのまま部室に入ってしまった。

ううむ。嫌われているのだろうか。


「日吉はいつもああだから、気にしなくていいと思うよ?」


俺たちにもそうだから、と滝が笑って言う。
そして彼も着替える為に部室に入っていった。


「あと来てないのは、跡部と樺地君とジロー君だね。」

、ジローと同じクラスやろ?一緒に来なかったんやね。」

「ジロー君、6時間目居なかったから。」


サボってたんじゃないかな。
お昼の時眠たそうに何処かへ行っていたから。


「なーなー。」

「何?向日君。」

「俺の事、岳人って呼んでミソ。」

「岳人君?」

「くんは要らない。が・く・と!言ってミソ。」

「岳人?」

「うっし!俺も名前で呼ぶかんな!!!」

「え。うん。」

「んなっ!んじゃあ、俺の事も侑士って呼んでーな。」

「んー。忍足がいい。」

「な、何で?」

「忍足は忍足って感じだから?」


なんじゃそりゃ。


「とにかく。忍足はこのままがいい。駄目なの?」

「・・・・うっ・・・。」


本人はそのつもりは無いのだが身長差から彼女の顔を見下ろす形である忍足。
やはり彼も男子中学生。自分を見上げる、しかも若干不満そうな、
そのなんとも言えない表情には負けるらしい。


「・・・・・わかった・・・そのままでかまへん。」

「ありがと!」


・・・・・あかん。

このコ慣れると笑顔が可愛く見えてくる。


好みとちゃうのになぁ。



「なーに難しい顔してんのー?侑士。」


向日に言われて忍足は少し考える素振りを見せて、そしてくすりと笑って目を細めた。


「侑士、一人で笑ってるのはキモい。

「そうだよ、キモいよ。

「なー、。」


・・・・・・・・・・・。

せっかく良い気分なのにそんな事言うな。












「よぉ。」

「うぎゃっ。」


忍足を見ながら向日と笑っていると、
突然後から頭を掴まれ、は驚きの声を上げる。
跡部はすでにジャージ姿だった。


「・・・・・跡部、びっくりしたよ。」

「抱きしめないでやっただけ有難く思え。」

「まあ・・・それは、ありがとう。」


って。


「何でお礼言ってんのよ私。」


セルフツッコミだった。


「跡部、樺地とは一緒じゃねぇの?」

「ジローを探しに行ってる。」

「お。来よったみたいやで。」

「・・・・・ウス。」


忍足は視線で示す。
芥川を片手に持ったまま樺地がぺこりと頭を下げた。


「こんにちは!」

「ウス!(こんにちは!)」

「力持ちなんだね。ジロー君を余裕で持ち上げちゃえるし。」

「ウス。(力はテニスでも役立ちます。)」

「そうなんだ。凄い!」

「ウス。(ありがとうございます。)」

「樺地としっかり意思の疎通がはかれてんだな、。」

「え。そりゃできるよー。同じ人間なんだから。」


否、俺らにはできねぇよ。


「樺地、ジローを連れて行け。」

「ウス。」

「てめぇらもさっさと着替えに行きやがれ。」

「わかってるよ!」

。」

「何?」

「これが今日の練習メニューだ。」

「ほい。」


は跡部から紙を受け取って目を通す。
素人目から見てもそれはずいぶんハードなものだと理解できた。
2種類書いてあるようだが、おそらく片方が正レギュラーもう片方がそうでないものだろう。
片方は他方よりも内容が多い。やはり正レギュラーのメニューの方がハードなのだろう。


「うひゃぁー・・・こりゃ凄いや。」

「当たり前だ。」


自慢げに言う彼を見てはぷっとふきだす。


「アーン?何が可笑しい。」

「ううん。跡部はテニス好きなんだなぁって思ったの。」

「・・・・・・。」

「あ。照れちゃってる?」


ガツンッ


「ふげがっ。」


跡部の拳がの頭に直撃する。
その音に、跡部は驚いたような表情をした。
そして自分の拳と彼女とを交互に見る。


「・・・・・・・・。もう少しまともな悲鳴あげられねーのか・・・?


え。何その、コイツ女に生まれてよかったのか、って言わんばかりの表情。


「いきなり何すんだよ!跡部のバカ部!」

「アーンッ!?」

「女の子殴るってありえなーい!」

「おまっ・・・・・・・・あの悲鳴で女語るのかよ。」

「何その目ーーーーっ!!!私はちゃんと女じゃいっ!!」


跡部はをジーッと上から下まで眺めてそしてハッと鼻で笑った。


「ギリギリだな。」





何がだよっ!!
















先ほどの、音、とは、

頭が奏でた音ではなくての悲鳴である事をここに補足しておこう。

























Buck


































□□□□
相変わらず尻切れトンボなんですが今回はそのレベルがぐんと上がった気がします。
どうでもいいですが、この母親は火來の理想の母親です。
理想が変だとはよく友人に言われてますが、何か。