【 MARBLE あとべさまの謎 】
「オイ起きろ。」
「起きろ。」
「おーきーろーーーー。」
「・・・・・・。」
・・・・・・・・・どうしろってんだよ。
跡部景吾は、少女の両頬に手を当てたまま考える。
しかも、その少女は気絶しているようで、彼女を支えているのはその両頬に当てられた跡部の両手のみ。
だらりと気を失っている少女を両頬をはさんでいる状況で支える少年・・・・・・。
傍から見るとなんとも変な光景である。
とりあえず、支え方を変えるか。
跡部はそう思い、片方の手を頬から放し、すばやく少女の脇へ腕を通す。
もう片方も同様にしてとりあえず先ほどの変な状況からは離脱。
「・・・・・・ったく。コイツ、気絶するほど男に免疫がねぇのか?」
俺が少し顔を近づけただけで気絶しやがったし。
・・・・でもまあ気絶させたのは俺だし仕方ねぇか。
跡部は彼女を肩に担ぐ。
そして、テニスコート、つまりテニス部部室の方へ向かう。
ギャラリーの女共に見つかったら色々と面倒だ、跡部はそう思い校舎裏を歩いていく。
ガチャ
何とか人に見つからずに部室まで来れた。
部室の裏のドアを開けて中に入るが部員は練習中のはずだ誰も居ない。
「・・・・・・っと。」
跡部はソファーに彼女を寝かせる。
とりあえず跡部はこのまま彼女が起きるまで待つ事にした。
起きたらすぐに出て行かせれば問題ないだろう、そう思ったからだ。
「跡部。何処行ってたん?」
「・・・・・忍足。お前、部活中だろ。」
一番厄介な人間に見つかった、跡部はそう思った。
「他人の事言えないやろ。それに今日はもう部活そろそろ終わるで。俺は着替えるんや。」
「あ?終わるだと?」
「そや。さっき監督が来てな、コート整備があるから終わるんやと。」
そう言って忍足はロッカーを開ける。まだ彼女には気が付いて居ない様だ。
このまま気が付かずに出て行って欲しい、跡部は切実にそう思っていた。
「・・・・・んっ・・。」
彼女が小さく身動ぎして声を漏らす。やばい、跡部はそう思った。
忍足を見てみると案の定声のした方を見て不思議そうに近寄ってきた。
「・・・・何や跡部。自分、女連れ込んどるん?」
忍足は迷惑そうな顔をする。
迷惑そうな顔をしているが好奇心からか着替える途中のまま、
ソファーで寝ている彼女の顔を見る。
「・・・・・・・・・・・って、このコ。」
「知り合いか?」
「知り合いっつーか・・・・・・・」
忍足が続きを言おうとしたのとほぼ同時に、彼女の目が開かれる。
「・・・・・・・うー・・。」
「あ、起きたで。」
・・・・・・私何してたんだっけ。
はまだ焦点があわないまま、ぼーっと考える。
確か。木から落ちて、
あとべさまと話して、あとべさまの顔が近づいて。
そっか、色んな意味で驚きすぎて気絶しちゃったんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って。
何で、忍足の顔が目の前に。
しかも、裸。
「・・・・・っ!!??」
は驚きのあまり声すらも出ず思いっきり飛び起きてソファーの裏に隠れる。
「なななななななななななななな菜!!!???」
「菜・・・・?」
「何で、何で、何で!?」
何で忍足が裸で私を見てるんだよっ!
同年代の裸なんて小学校中学年以来見た事無いよっ!!
はソファーの背もたれを握りながら思う。
「お嬢さん、何で涙目・・・・・。」
「・・・・・・・。」
は半ば威嚇のように忍足の顔を見ていた。
それを見ていた跡部はため息を吐いて忍足を見る。
「忍足。服着ろ。」
「え、ああ。」
跡部の言葉に疑問を懐きつつも忍足はワイシャツを着る。
すると、はソファーを握っていた手の力を緩めた。
「・・・・・お前、男の裸しかも上半身だけにも免疫ねぇのか?」
「なっ!?当たり前でしょ!!」
はソファーの陰から出て跡部を睨む。
それを見て忍足がやっと跡部の言葉を理解した。
「何や。お嬢さん、俺が服着てなかったから怯えとったんか。」
その言葉にはコクコクと頷く。
忍足は面白そうに笑う。
「純粋なんやねぇ。」
というか、中学生はそういうものだと思うのですが。
「んで、忍足。コイツと知り合いなんだな。」
「そや。」
「テメェの女か?」
「ちゃう。友達。」
忍足は、なー、とに微笑みかける。
「忍足、それちょっとキモイ。」
「酷ッ!」
「だってー、顔と合わないよその言い方。」
「相変わらずきっつい事言うお嬢さんやなぁ。」
「って、そうだ名前。友達になろうって言っておきながらお互い名前言ってなかったよねー。」
「やなー、案外名前知らんでも会話は成り立つんやねー。」
「私は3年でって言います。好きに呼んで。宜しくね、忍足。」
「俺の名前知っとるみたいやけどまあいいか。忍足侑士、3年な。」
ガシッと握手をする。
「・・・・・・・・・・・・・・・オイ。」
「どうしたの?あとべさま。」
そんな不機嫌オーラ全開で。
「跡部はな、俺らだけがわかるような会話してたから怒っとるんや。」
「そうなの?あとべさまって見かけに寄らず可愛らしいんだね!」
「そやそや〜。」
「忍足、さっさと着替えて出ていけ。」
「せやかて、着替えられんよ。」
忍足は言葉を濁す。
それを見て、は自分が居るからだと理解した。
「え。あ、ごめん。すぐ出て行くから!あとべさま、倒れちゃってすみませんでした。」
そう言って一番近い扉のドアノブを握る。
ドアノブをひねろうとした時、急に視界が暗くなった。
「・・・・・・・・え。」
「忍足、さっさと着替えろ。」
「お、おう。」
「・・・・・・あ・・あのー・・・あとべさま・・・・?」
「何だよ。」
「・・・・・目、目がぁ・・・。」
「見えないようにしてやってんだ。ありがたく思え。」
ありがたくないよ。
は内心でつっこみを入れる。しかし、視界が遮られているので下手に動く事も出来ない。
ドアノブを握ったままの状態の彼女の目元に跡部が手を当てて目隠しをしている、それが今の状況だ。
・・・・・というかコレ恥ずかしい。
また気絶しそう。
背中には跡部の気配が、自分の目元には跡部の手が。
は本日2度目の体温の急上昇に慌てて、あわあわと両手を上下させている。
「あ、跡部、終わったで。」
「ああ。」
忍足の着替えが終わったらしく、やっとから手を離した。
急に明るくなって、は瞬きを数回する。
ガチャ
「侑士ー、やっと終わったーーーー!!!」
「・・・ったく。まだ時間あるじゃねーか。」
「仕方ないですよ宍戸さん。」
「確かに、まだ運動し足りないって感じするね。」
「同感です。」
「・・・・・・・・・・・ぐー・・・」
「・・・・・・芥川さん・・・・起きてください。」
ぞろぞろと男子生徒が入ってくる。
その中に、見知った人間が一人混ざっている事にはすぐに気が付いた。
「ジロー君っ!」
大きな体の男子生徒に襟元を掴まれながらも寝ている少年。
はその少年に駆け寄る。
「・・・・・・うー・・・誰?」
「え。忘れてるの!?酷いなぁ、私、だよ。」
「あー・・・ああ、ちゃんっ!!」
芥川は襟元を掴んでいる男子生徒に手を離してもらい、すとんと着地しての元へ駆け寄る。
そして、ぎゅーっと彼女の手を握る。
ああもう可愛いなぁ・・・・・。
「何で?何でこんな所居るの!?」
「それがね・・・・・かくかくしかじかなの。」
「ちゃん、それじゃあよくわかんないよ。」
「つまり、話すのが面倒なの。」
「なるほど。わかった、もう聞かない。」
「・・・・・・ってそれでええのかいなっ!!」
「「ええのです。」」
と芥川のダブルでの攻撃に、つっこみを入れた忍足は撃沈した。
なんやそれ、と脱力する忍足を軽く無視する2人はまだ日は浅いもののいいコンビになりそうである。
「ジロー、そいつ誰?」
「向日!このコはね、ちゃん!俺の友達!!」
「ふーん。もしかしてお前、転校生?」
「そうだよ。」
「そっか。俺、向日岳人!ジローと同じ3年テニス部だぜっ!」
そう言って向日はぴょんぴょんと飛び跳ねる。
この人も可愛い・・・・・。
ガシッ
「うわっ!?」
は我慢ならず、向日の頭に触れる。
触れる、といっても音から想像できるように、掴む、という表現の方が正しいかもしれない。
向日はいきなりの行動に驚いて声を上げる。
「宜しく、向日君!私は、だよ。」
そう言っては右手でわしゃわしゃと向日の頭を撫で始める。
「え、何!?」
かーーわーーいーーいーー!!
「ちゃん!俺も俺も!!」
芥川がの左手を握って自分の頭に持ってきて言う。
・・・・・じゅるり。
っと、いかんいかん。
「勿論だよ!」
は嬉々と芥川の頭を撫でる。
今すっごく幸せ・・・っ!
はにこにこと笑いながら2人の頭を撫でる。
片方は少し照れながらもの手を払おうとしていない。
片方は嬉しそうに笑っている。
どちらも好みのリアクションだった。
「・・・・・・・・・・・・オイコラ。」
「何?あとべさま。」
「とりあえずそいつらから離れろ。」
「え。ヤダ!」
「・・・・・・・・。」
跡部の言葉に応じない。
すると、跡部はの背中側にまわる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・これでも離れないか?」
「・・っ・・・離れます!離れます!離れます!!!」
は残念そうに芥川と向日の頭から手を離した。
それを見て跡部はの腰に腕を絡めて引き寄せたまま満足そうに笑った。
「・・・・・・・あの・・・。」
「何だ?」
「あとべさまも離れてほしいのだけど・・・・・。」
「ああ、そうだったな。」
跡部はの腰にまわした腕を解く。
腕が離れるのと同時に、跡部と距離を取る。
「・・・・なあ、、今疑問に思ったんやけど。」
「ん?」
「自分、跡部のファンやろ?なのに跡部が近づくの嫌がるんやね。」
「ファン?そんなわけないよ。」
「え、違うんですか?」
「え?」
いきなり聞こえた知らない声には驚きの声を上げる。
振り向くと、長身の男子生徒が申し訳無さそうに口元を押さえていた。
「あ・・・ごめんなさいっ。驚いたもので・・・・。」
「別にいいよ。貴方、名前は?」
「鳳長太郎です。」
「私は。宜しく。敬語じゃなくていいよ。」
「でも、先輩ですし・・・・。」
「え。貴方年下!?」
「は、はい。」
「うわぁー・・・背ぇ高いねぇ。」
は自分より頭1個分近く差のある身長の鳳を見上げる。
よく言われます、鳳はそう言って笑った。
背高いけど可愛いな・・・・・・。(にんまり
「・・・・・おーい。、話を戻したいんやけどー。」
「あ、忍足ゴメン。」
「ええよ。にしても、ファンじゃないのに様付けで呼んどるんやね。」
「え?・・・ああ、フルネームで呼ぶのはファンだけなんだ。」
「フルネーム?」
「・・・?違うの??」
何だか話がかみ合っていない気がする。
「・・・・・お前、俺の名前フルネームで言ってみろ。」
「あとべさま。」
「フルネームだぞ?」
「あとべさま、でしょ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・???
何で皆さん黙っちゃってるのでしょうか?
「「・・・・っぎゃはははははーーーー!!!」」
向日と芥川が堪えきれずにふきだした。
よく見ると鳳と帽子を被った男子生徒もに背を向けているが肩が揺れている。
というか、跡部と忍足以外は皆笑っている。忍足は驚きすぎて逆に笑う事が出来ないらしい。
「・・・・・もしかしなくとも、跡部の事あとべが苗字でさまが名前だと思ってたん?」
「違うの?」
「違う違う。さま、ってのは敬称やで。」
「え。様!?・・・・様って、王様とかの様?」
「そうそう。」
「様なんて敬称つけないでしょ中学生に、普通。」
様だよ!?
ヨン様とかの様だよっ!!??
「・・・・・というかそこで大声で笑ってる2人!!」
「「・・・・・・ご・・ごめっ・・・ぷくくっ・・」」
「2人で声そろえて笑うなーーーーっっ!!!」
何か恥ずかしくなってきたじゃないかッ!
「しかも鳳君まで・・・・・・・。」
「え、あ、ごめんなさい・・・・・くくっ・・・。」
言ってる事とやってる事が一致してないよ。
「・・・・・・おっ前・・・おもしれーな。」
「・・・褒めてる?」
「・・・・っくく・・・っ。」
帽子を被った男子生徒が笑いを堪える為に口元に手を当てながら言う。
決して褒めているようには見えない少年をは不機嫌そうに睨む。
「否、笑って悪かったって。俺、宍戸亮っつーんだ。宜しく。」
「・・・・・・、宜しく。」
宍戸の行動に納得しがたいが、一応自己紹介はきちんとする。
ってか、私今日自分の名前何回言ったかな・・・・・。
「あ。俺は滝萩之介ね。一応宜しく。」
「うん。何度も言ってるけどです。宜しく。」
また一つカウント。本当、何回目だこれ。
「・・・・・・オイ。」
「(びくっ)な、何でしょうか。」
「俺の名前は、跡部、景吾、だ。」
「跡部・・景吾・・・様、ですね。」
「そうだ。」
「覚えました。名前間違えてごめんなさい。」
声色の低さから跡部がかなり怒っているようなのが理解できたは低めに答える。
今更よく考えてみれば、さま、なんて名前違和感あるよね。
何で気が付かなかったんだろう・・・・・?
「・・・・・・・っていうかそろそろ着替えたいのですが。」
男子生徒が迷惑そうに言った。
だが、彼も先ほど皆と同じように肩を震わせて笑っていたはずだ。
「また着替えるの邪魔してるよ私。」
「また目隠ししててやろうか?」
「慎んでお断りさせていただきます。」
またあんな恥ずかしい思いはできませんよ。本当。
「では、邪魔してすみませんでした。失礼します!」
「待て。」
「・・・・・・何でですか跡部様。私はストリップショー見る趣味はありませんよ。」
「俺様のストリップショーを簡単に見せるわけねーだろ。」
何かそれひっかかる言い方だな・・・・。
「お前、部活は?」
「入ってません。」
「入る予定は?」
「今の所ありません。」
「じゃあ、ココのマネージャーをやれ。」
「嫌。」
が迷う事無く即答する。
「・・・・・ほぉ。断るのか。」
何だか嫌な予感がする。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・抱きしめるぞ。」
「ヤメレクラハイ。」
呂律まで怪しくなってきた。
ずかずかと近づいてくる跡部に、それから逃げる。
は丁度見つけた人間の後ろに隠れる。
「・・・・・・・俺を巻き込まないでください。」
「うっさい。男でしょ?か弱き女を護れ。」
「さっきの会話聞いてると貴女がか弱い女には思えないのですが。」
「・・・・・・・・・・。」
何気にこの人酷い。
無言のままは男子生徒を見る。
すると、彼はため息を吐いて跡部を見た。
「あの、本当にそろそろ着替えたいのですが。」
「日吉。」
「何ですか。」
「トレーニングルームで着替えろ。」
「わかりました。」
「え!?行っちゃうの!?」
「はい。」
「・・・・うっ・・・裏切り者っ!!」
「元々貴女と手を組んだ覚えはありません。」
すっぱりと言われた。
「んじゃ、俺もトレーニングルームで着替えるか。」
「俺もそうします、宍戸さん。」
「おう。」
「じゃあ俺も。」
「俺も行くC〜。」
「ゴメンね、さん。」
ぞろぞろとロッカーから服を取り出して隣の部屋に行ってしまった。
しかも、申し訳無さそうにしてくれたのは滝君だけかよっ!
「俺はを護るでっ!」
「おおっ!忍足っ!!我が友よーーーっ!!!」
流石友達信じてたよっ!
忍足は出て行かずに残っていた。
それには感激する。
「忍足。」
「何や?」
「明日のトレーニングメニュー3倍にされたくなかったら出て行け。」
「岳人ー、俺も行くでーーー。」
「オイコラ。」
忍足の裏切り者ーーーーッッ!!!!
「樺地。お前も着替えに行っていいぞ。」
「ウス。」
「ぎゃーーー。貴方まで出て行っちゃうんですかーーーっ!!??」
結局、この部屋には跡部とだけになってしまった。
お母さん助けてーーーーーーーっっっ!!!!!
Buck
□□□□
何だか長さにムラがありすぎる。
あと、今更なのですがタイトルと内容があってない・・・・・。